よりよい授業づくりのために①
 教員を目指すにあたって、しっかりとした授業ができることは必須事項ですね。では、「よい授業」とはどのような授業でしょうか?「楽しい授業」「わかりやすい授業」「学べる授業」・・・。どれも当てはまると思います。それではこのような授業をするために、教員は何をどのように準備し、どのように授業を展開させれば良いのでしょうか?今回は「よい授業」をつくるための準備や工夫について考えてみたいと思います。

*本テーマは「①準備編」「②本番・授業後編」の2回に分けて投稿しています。また、筆者は国語科教員を目指しているため、国語の授業を想定して例などを記述しています。

 それでは早速本題に入りたいと思います。まず前提として、教員が考えなければならない「授業」には3つの時間軸があります。

 それは、授業前授業中授業後です。

「授業中」というのはもちろん生徒を前に教壇に立つ、言うなれば「本番」で 、ここを成功させることが一番重要なことです。しかし、「本番」を成功させるためにはそれ相応の準備が必要となります。また、授業が終わった後も、授業内容によっては課題への対応がありますし、それ以外でも必要なことが多々あります。そして、時間軸によって必要となる準備や意識するべきことは異なります。そのため、時間軸別・項目別に分けて一つずつ考えていきたいと思います。



授業前の準備

 授業前に必要な準備としては次のようなことが挙げられます。

①指導案 ②板書計画 ③ワーク作成 ④台本作成(練習)

①指導案

 指導案とは授業の計画を書いたもので、これがなければ授業は成立しません。また、指導案をいかに具体的に、詳細に書けるかで授業の精度も変化します。指導案には書かなければならない項目がいくつかあります。それぞれ考えてみましょう。

・「教材観」「生徒観」「指導観」
 まずは、これらの項目についてです。「教材観」とは、その教材はどのような内容で、どのような点から教材として設定したのかを記述する項目です。ここで重要なのは、生徒がこの教材を読む(学ぶ)ことによって何を得るのか、教材の「価値」を具体的にすることです。評論文であれ、小説であれ、作品を読むことで生徒に何を学び、考えて欲しいのかというイメージが定まっていなければ、授業の目標を決めることもできませんし、授業内容も盛り上がりに欠けてしまいます。そのため、教材観は授業の根幹にあたる部分と言えるでしょう。
 「生徒観」は授業を行う学級がどのような特徴を持っているのかを記述する項目です。その教科が得意な学級と不得意な学級では、授業に対する意欲や理解度も異なります。次の「指導観」を考える上で、生徒たちの特徴をよく掴むことが大切です。そして、「指導観」では「生徒観」を受けて実際にどのように授業を展開していくのかという部分を記述します。例えば、古文の授業で基礎的な部分に不安があるという「生徒観」を持ったのであれば、文法や単語の確認を丁寧に行うなど、生徒の実態に合わせた指導の方法を記述します。

・「単元の目標」「評価規準」 
 「単元」とは一定の学習活動のまとまりのため、必ずしも一つの教材のみを指すわけではありません。そのため、「単元の目標」とは、単元全体を通して生徒に達成してほしい目標を示したものです。「評価規準」も同じく、その単元(教材)においての評価の規準を観点別に示したものです。

・「単元の指導計画」
 「単元の指導計画」では、その単元(教材)をどれくらいの時間配当で扱かという計画を示します。この時重要なのは、それぞれの時間の関係性です。授業内容の配分で言えば、ただ教科書の分量で分けるのではなく、「この部分で分けるからこそ生徒の関心が高まる・興味を引く」など、よく考える必要があります。また、1回分の授業にのみ目を向けるのではなく、全数回の授業を見たときに、この回はどのような役割を持つのかということを念頭において計画を立てることが大切です。そのためにも、それぞれの時間で「何を」「どこまで(どのような段階まで)」扱うのか、生徒がその段階でどの程度理解していればよいのかを具体的に考えて学習内容を決める必要があります。

・「本時の目標」「本時の展開」
 「本時の目標」は、今回の授業の中で生徒に達成して欲しい目標を記述します。ある一部分に絞った目標ではなく、授業全体にかかるような目標を立てることが大切です。その上で、「本時の展開」を記述します。これは文字通り授業の展開を示すもので、授業の台本と言える部分です。「どの展開で」「何をするのか」「何に留意するのか」「どのように評価するのか」など、特に具体的に書くことを意識する必要があります。

 以上のように指導案について項目ごとに注意するべき点を自分なりに述べました。いずれの項目もとにかく具体的に記述することが重要です。誰でも指導案を見れば授業内容がわかる、授業ができるほど詳細に書くことを意識して作成しましょう。

②板書計画

 板書計画を作る際に意識しなければならないことは、「板書は生徒のノートに残る」ということです。ノートの取り方は生徒が自分で工夫することもありますが、基本的には板書されていることをそのままノートに写します。そして、授業が終わっても宿題や復習でノートを見返すことになります。その際、ノートに書かれていることがいい加減であったり、わかりにくいものであった場合、生徒の理解度や意欲は大幅に低下します。生徒がノートを見返したときに、授業を思い出せるような板書を作る必要があります。
 そのために必要なこととして、書くべき内容レイアウト色使い等が挙げられます。書くべき内容はそのまま「何を板書するのか」ということですが、教科書の全てを板書していては教員・生徒双方に負担があり、教科書をただ写しただけということになります。要点となる部分を教員が抜き出し、まとめるという作業が必要になります。また、だからこそ、どの部分についての記述なのかを明確にするために、段落番号やページ数、行数は必ず書くべき事項でもあります。そして、内容に付随してレイアウトも工夫することが重要です。要点を書いたとしてもそれらを並べただけの板書は無味乾燥で、生徒にとっては面白くない板書になります。対比が用いられている文章であれば表にまてめてみるなど本文の内容・要点が視覚的にわかるような工夫が必要です。また、色については、重要事項は黄色、語句の意味は赤で書くなどの役割を決めて使い、それらを生徒にも伝え共通の認識(=約束)を作ることで分かりやすい板書になると思います。

③ワーク作成

 ワーク(問題プリントなど)は授業を補助するために役立ちますが、板書(ノート)との関係性・バランスに獣医して作成する必要があります。例えば、ある一時間において板書の代わりに穴埋めのワークプリントを用いて授業を行った場合、生徒がノートを見返すと、プリントを使った部分は空白となり、教材の内容が途中で断ち切られてしまいます。どのような事柄をワークとして用いるのか、ワークはどのように扱うのか(ノートに貼る・ファイリングする)を板書事項との関係性も考えながら作成することが重要です。

④台本作成(練習)

 台本作りとは、指導案とは別に詳細な授業の台本を作ることです。どれくらいの時間で、どのような説明をするのか、どのタイミングで板書するのか、どのように発問するのか等、実際の授業での動きを文章化します。特に発問の場面では、正解となる回答だけではなく、他に予想される答えや、それに対する返答のしかたなどあらゆる事柄を想定しておくことが必要です。
 授業中は教えるべき内容が飛んでしまったり、あらゆるアクシデントが起こることがあります。その際にこの台本に立ち返って授業が再開できるように、詳細に作りこむ必要があるのです。そしてこの台本を基に授業の練習をし、微調整を重ねていきます。

まとめ

 今回は、授業前に準備する事柄を内容別に考えてみました。さらなる前提として、しっかりとした教材研究が必要となりますが、それらを踏まえても実にさまざまなことを考え、準備をしておく必要があることがわかりました。「よりよい授業づくりのために②」では授業時(本番)と授業後の二つの時間軸について考えてみたいと思います。

 最後まで見て頂きありがとうございました。Y.T